「退院支援」お勉強部屋

患者さんの生活視点を大切にしましょう!

主治医意見書の書き方のコツ

主治医意見書とは?

要介護認定は「認定調査」および「主治医意見書」に基づき、介護認定審査会において全国一律の基準に従って判定されています。

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主治医意見書とは、主治医が申請者の疾病や負傷の状況などについての意見を記し、要介護認定を行う際に資料として用いられます。

また主治医意見書は介護サービス計画を立てる際にも利用されます。

そのため、主治医意見書は医療専門職以外の人でも理解できるように、専門用語や略語は避けて、わかりやすく記入する必要があります。
 

主治医意見書の書き方のコツ

主治医意見書(表) 主治医意見書(裏)

主治医意見書はフォーマットがあり、それを埋めていけば良いのですが、実際に書いて見るとよくわからない点が最初はたくさん出てきます。また、診断や治療を中心とした病歴要約とは違うため、どのように書けばよいのかわからずに戸惑ってしまう若手医師もいると思います。

一番大切なことは「患者の生活視点を中心に主治医の意見を述べる」ということです。

書き方にはコツがあるため、下記を参考にしてまずは自分で書いて見ましょう!

そして、書いたら必ず指導医や先輩医師に添削をしてもらって下さい。小論文や日記の上達法と同じです。具体的に訂正・助言してもらうと、だんだんとコツがつかめて上手に書けるようになります。

 

主治医意見書(最初)

記載は、インクやボールペンを使用します。消えるボールペンや鉛筆はダメです。ワープロ印字でも大丈夫です。 

  • 申請者の名前、生年月日、年齢を間違えないように気を付けましょう。
  •  基本は自宅住所を書きますが、施設入所中の場合は施設の住所・電話番号を書きます。
  •  医師氏名はワープロ印字やゴム印を使用した場合でも必ず自署します。印鑑は不要です。
  •  最終診察日には最後に患者を診察した日を必ず記入します。
  •  意見作成回数は、主治医が申請者に対して意見書を作成した回数を記入します(作成料の区分に使用されます)。
  •  「他科受診の有無」は不明の場合は「無」。「有」の場合は必ず診療科を記入します。   
1.傷病に関する意見

1.傷病に関する意見書(診断名、症状としての安定性、治療内容)

(1)診断名

  • 特定疾病または生活機能低下の直接の原因である傷病名を優先して記入します。
  • 診療開始日ではなく、発症日を記入します。
  • 不明確な場合はおよその年月を、まったく不明の場合は「不詳」とします。
  • 診断名が多数ある場合は「5.その他特記すべき事項」に記入します。
  • 第2号被保険者(満40歳以上65歳未満)では、要介護状態をきたした「特定疾病」に該当する必要があり、特定疾病を必ず記載します。
ここでの診断名は、一般的な病歴要約や入院サマリーの書き方とは異なり、
「必ずしも主病名や入院病名の順番ではない」ということです。
生活機能低下の直接原因となっている診断名を順に記載します。

   

(2)症状としての安定性

急性期であったり、急激な変化が見込まれ積極的な医学的管理を必要とすることが予想されたりする場合は「不安定」を選択し、具体的な内容を記載します。

 

(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過および投薬内容を含む治療内容

  • ADLの低下、外出や社会参加の機会減少、家庭内での役割の喪失など、生活機能低下を引き起こしている要因を具体的に記載します。
  • 投薬については、睡眠、排泄、疼痛の改善など、生活の安定や介護に影響する薬がある場合は、服薬方法、見守りの必要性など介護などで特に留意すべき点を記入します。
  • 医学的な専門用語はできるだけ避けます。
病歴要約のような詳細な病歴を書く必要はありません。必要であれば簡潔に平易な言葉で病歴をまとめて、あくまでも生活機能低下の直接原因となっている疾患を中心に記載します。 

 

2.特別な医療

2.特別な医療

作成日から起算して、過去14日間に看護職員などが行った診療補助行為について判断します。看護の度合いの把握であり、「医師でなければ行えない行為」「家族または本人が行った類似行為」は含まれません。

 

3.心身の状態に関する意見

3.心見の状態に関する意見

身体の状態 

(1)日常生活の自立度等について

  【障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定基準】

生活機能に着目して能力に応じて判定し、補装具・車いすなどを使用している場合は、使用している状態で判定します。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

 

 【認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準】
意思疎通の程度、症状、行動に着目し、評価にあたっては家族など、介護者からの情報も参考にします。

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準https://homonkango.net/glossary/na_row/nichijouseikatsu_jiritsudo.html

 

認知症高齢者の日常生活自立度判定(チャート)】

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(2)認知症の中核症状
(3)認知症の周辺症状
平成21年度より調査員による調査項目から、幻視・幻聴、暴言、暴行、火の不始末、不潔行為、異食行動が除外されたため、主治医の意見が重要になります。
(4)その他の精神・神経症
認知症以外の精神・神経症状がある場合には「有」にチェックし、その症状名、専門医受診の有無も記入します。特に失語、構音障害、せん妄、傾眠傾向、失見当識、失認、失行がある場合には記載が必要です。
(5)身体の状態
利き腕、身長・体重は、移乗・入浴介護など介護の手間を考える上で必要になります。
体重変化は栄養状態の把握の目安となります。
平成21年度より調査員による調査項目から、拘縮(肘・足関節)、褥瘡、皮膚疾患、飲水が除外されたため、主治医の意見が重要になります。

 

4.生活機能とサービスに関する意見

4.生活機能とサービスに関する意見

(1)移動
要介護者が自立した生活や心身の安定を取り戻せるよう、生活機能の維持・改善に着目し、栄養の改善、リハビリ目標の設定、疼痛緩和、医学的管理の必要性、予防給付の適否など、適切なケアプランの作成に役立つ情報を提供します。
(2)栄養・食生活
高齢者では、慢性的なエネルギー・たんぱく質などの補給不足による低栄養が、筋力や身体機能の低下、感染症や褥瘡などを誘発し、生活機能の低下をきたします。要介護状態の改善および重症化の予防の観点から情報を提供します。

現在の栄養状態の評価は、
 ①過去6か月程度の体重減少
 ②BMI 18.5%未満
 ③血清アルブミン3.5g/dL以下

の3項目のうち1つでも該当する状態であれば「不良」にチェックします。
これらの情報がない場合は、食事行為や摂取量、食欲、浮腫・脱水などの全身状態から総合的に判断します。
(3)現在あるかまたは今後発生する可能性が高い病態とその対処方針
介護支援専門員(ケアマネージャー)がケアプランを作成するにあたって参考にすることを考慮し、対処方針や緊急時の対応などの注意点を記入します。
尿失禁の有無は、本欄の記載がおむつ代の医療費控除資料として用いられるため、現時点で発生している場合には必ずチェックします。
(4)サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し
現在の状態から勘案して、おおむね3~6か月間、介護サービスを利用した場合の生活機能の維持改善が、どの程度期待できるかを判断します。傷病の状態としての見通しや予後の推定ではありません。
心身の状態が不安定であったり、認知症などにより理解がえられず、予防給付の利用に適さないと判断されたりする場合においては、本欄の意見が重要になります。
(5)医学的管理の必要性
医学的観点からみて、必要と思われるサービスを選択します。この欄は「サービスに関する指示書」に代わるものではありません。
(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
血圧管理、摂食、嚥下機能、運動負荷を伴うサービスについての留意事項を具体的に記入します。移動については歩行、居室とトイレの移動、ベッドから車いす・便座への移乗なども含めて、留意事項があれば具体的に記入します。
医療職のいない状況で介護サービスが提供される場合が多いため、不安感を助長させないように適切な助言を記載しましょう。
(7)感染症の有無
介護の現場における二次感染を予防する観点から、日常診療から知りえた感染症に関する情報を記入します。必ずしも新たな検査を求めるものではありません。

5.その他特記すべき事項

特記すべき事項

認定調査と主治医意見書の項目をコンピューターに入力し、一次判定ソフトで仮の介護度が自動判定されます。一次判定ソフトが改良され、統計的な推定による判定がより重視される傾向にあります。
最終的な介護度は介護認定審査会による二次判定で決定されます。そのため統計的な推定にはなじまない「申請者固有の介護の手間」がある場合は、固有の情報に基づいて具体的に記載されている必要があります。他の項目で記入しきれなかったことや、選択式では表現できないことを簡潔に記入します。

生活機能の状態、生活や家族環境、療養の様子、栄養の問題、口腔内の状況、予防給付の適否、リハビリテーションの目標など、要介護判定やケアプラン作成、サービスを受ける上で重要と考えられる事項があれば、具体的に情報を記載しておきます。

おむつの使用、電動ベッド、介護用品など、医師の意見として、具体的に必要なものがはっきりしている場合には、それが必要な具体的状況とともに記載しておきましょう。 

「意見」を述べるこの部分こそ、主治医意見書としてのキモ!
介護が必要な生活状況が見えるようにを具体的に記載しましょう。

 

参考資料(ダウンロードはこちら)

主治医意見書(原本 )

主治医意見書記入のポイント(東京都医師会)

主治医意見書記入の手引き(埼玉県庁HP)

「高齢者を支える制度とサービス」(健康長寿ネットHP)