「退院支援」お勉強部屋

患者さんの生活視点を大切にしましょう!

施設とは?

「施設」にもいろいろある

「腹痛を主訴に救急搬送された、施設入所中の80歳男性です」
 施設ってどんな施設?
 
一言で「施設」といっても、入居条件や運営主体の違いにより様々な種類があります。
退院支援の基礎知識として、どんな種類の施設があり、どんな人が入所対象なのかを知っておくことは、とても役立ちます。各施設の特徴を知っておきましょう。
 

要介護認定が必要かどうか

まず、施設は「介護保険の要介護認定が必要かどうか」で大きく2つに分けられます。
 
「要介護認定が必要な施設」
「要介護認定が不必要な施設」
 
ここでいう要介護認定とは「要介護1以上」のことですが、当然ながら介護必要度が高い人ほど入居の必要性が高いと判断されます。
 
要介護認定が必須かそうでないかに加えて、
「どの程度の医療行為に対応できるか?」が施設によって異なります。
 
また、運営主体の違いにより役割に応じて施設の種類が分かれています。
自治体や社会福祉法人が運営する公的施設と、民間事業者が運営している民間施設の2つがあります。
 

 要介護認定が必要な施設

→常に介護が必要な方が中心
 施設の概要①(要介護認定が必要な施設)

特別養護老人ホーム介護老人福祉施設
→重度の介護を必要とする高齢者の生活施設。医療行為はあまり行われない。
・「特養(とくよう)」と呼ばれる。
・原則として要介護3以上
・終身利用目的に、重度認知症や寝たきりなどの常時介護を必要とする人が対象。
・医療行為はあまり行われず、看護師の人数も最低限で日勤のみが基本。
 →「24時間継続した医療行為」が必要な場合は入所できない!
  特養で対応できなくなると退去が必要となる可能性あり!
・特養ごとに嘱託医がいるが、定期的な訪問診療と定期処方が主。
 → 臨時往診や細やかな診療をしても費用請求できない制度設計
  → 結果、医療や情報提供が十分に期待できないこともある…。
・費用は比較的安価だが数ヵ月以上の待ちが一般的。
・入院した場合、ベッドを確保しておいてもらえる期間はおよそ3か月。

介護老人保健施設
→在宅復帰を目指して一時的に入所しリハビリや医療行為も提供できる。
・「老健(ろうけん)」と呼ばれる。
・急性期治療終了後に病状は安定しているが、すぐに自宅に戻れない方が対象。
 →集中的にリハビリや介護・医療を提供して機能回復を図り早期自宅復帰を目指す。
・およそ3か月の入所期間。定期的に入居可否の検討がされる。
 →期間限定のため回転が早く比較的入所待ちの時間が短い。
 →しかし実際には自宅復帰できずに老健を転々としながら特養入所待ちなどのケースもあり、問題となっている。
・医師・看護師が常勤。医療は受けられるが高額な医療は受けられない。
 →高額なものや不要な薬剤は減薬や休薬となることがある。
・看護やリハビリの費用が加わるため特養よりも高い。
・入院した時点で、いったん退所扱いとなるため、戻る場合には再入所判定が必要

介護療養型医療施設
・重度医療と介護が必要な人が長期療養するための施設・病院。
「療養型」「療養病床」などと呼ばれる。
・病院の一部や敷地内に併設されていたり、医療法人が経営していることがほとんど。
・常勤医がいる。 → 病院に近い入所形態
・基礎疾患により重度の介護が常時必要となる方、安定期の医療行為(中心静脈栄養、胃瘻、頻回のかくたん吸引など)が長期に必要な方が主な対象。
ただし、今後に療養型の病床は縮小・廃止の方針となっている!
 →介護医療院とは?
  

要介護認定がなくても利用できる施設

→要介護高齢者も含めた高齢者のための生活施設。介護が必要でない方でもそれぞれの条件に合えば利用可能。介護が必要な場合にどの程度対応できるかは施設によって異なる。
 施設の概要②(高齢者向け住まい・施設)
サービス付き高齢者住宅
→安否確認と生活相談員がいるバリアフリー高齢者用賃貸マンション。
・「サ高住(さこうじゅう)」
・経済的に余裕のある自立した高齢者がそれぞれの生活を送ることが前提。
バリアフリー、常駐の相談員、安否確認サービスの3つは施設の認定として最低限必要。一定の基準を満たすと国から建設補助がでるため、急速に増加中。
・「生活相談、日中の見守り」サービスは必ずついているが、それ以外の「夜間の緊急通報、食事、ゴミ出し、洗濯、通院の同行」などは任意の有料サービスになっている。
・介護サービスや医療機関との連携を「売り」にしている施設もある。

 

有料老人ホーム
→高額な費用がかかるが、サービスが充実した民間経営の高齢者住宅。
・「有料(ゆうりょう)」と呼ばれている。
・介護型、住宅型、健康型の3タイプがある。
・自立度や介護の必要度によって希望にあった施設を選ぶ。
・設備が整っていたり日々のサービスが豊富、常時対応できる介護サービスや医療連携なとを売りにしていることも多い。
・入居一時金や月額利用料など高額なことが多い。

   

養護老人ホーム
→環境や経済的な理由により自宅生活できない人の入所先。市町村が管理。
・基本的に自立していないと入所できない。
・介護や医療が必要になると入所を継続できない可能性あり。

軽費老人ホーム
→高齢者向けの支援がついた小規模の施設。
・身寄りがない、家庭環境や経済的問題で家族と同居できない、生活に不安のある方が主な対象。
・A型は食事提供サービスあり、B型は自炊、C型は食事・生活支援サービスがついたケアハウス型。
自治体の助成を受けると有料老人ホームよりは安価で入所可能。
・介護型ケアハウスと自立型ケアハウスがあり、介護型であれば介護が必要になっても長期入所が期待できる。
・介護が必要な高齢者が増えているため、A型・B型は新たには建てられないため減少傾向。今後はケアハウス型(C型)に一本化の方向。
・都市部で急速に進む高齢化に対応して、居室面積を狭くして利用料を低く抑え、低所得者を対象にした「都市型軽費老人ホーム」の設置が、首都圏など特定の地域で広まっている。

小規模多機能型居宅介護
→デイサービス、ショートステイ、ヘルパー派遣など、ひとまとめに対応する施設。
・各施設の専属ケアマネージャーが担当となり、施設が備えた各種介護サービスが提供できるようにケアプランを作成している。
 

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 施設選びに必要な情報

  • 日常生活自立度→ADL、IADL
  • 認知症の有無 →どの程度?周辺症状は?
  • 介護保険申請・認定はあるか
  • 基礎疾患の評価→生活に大きな影響を与えている疾患は何か?
  • 医療行為の必要性→胃瘻、喀痰吸引、尿道カテーテル、酸素投与
  • リハビリにより今後の昨日回復が見込めるか?
  • 家族構成→主介護者や決定権のある家族は誰か
  • 入所するのは本人だけか、同居人もいるか
  • 資産の把握→施設の選択、大部屋、個室、好条件のサービスに関係

 

紹介状に記載しておくべきこと

  • 主治医から家族へどんな説明をしたか
  • 今後の見立て(退院先、予後など)
  • 何を目的とした転院なのか
  • 疾患名を主病名に明記・発症日、手術日
    (回復期への転院相談の場合は必須)
  • 処方内容
 
参考資料

「施設・居住系サービスについて」(PDF)(厚生労働省HP)

「老人ホーム・介護施設の種類、それぞれの特徴」(介護LIFULL)

「高齢者向け施設解説」(ベネッセスタイルケア)

   介護医療院とは?

   介護医療院とは?介護療養型医療施設との違い(みんなの介護)